永久歯の作られる時期
ご存知ですか?永久歯が作り始められる時期。
最も早いのは「6歳臼歯」です。
その時期は胎生3.5~4ヶ月、つまり赤ちゃんがお母さんのお腹の中にいる時期にすでに永久歯の原型(歯芽)が作り始められるのです。それから、赤ちゃんがちょうど生まれる頃に永久歯の原型は頭の先端から硬くなり始めます(石灰化)。その後、3歳ごろに歯の頭(歯冠)が出来上がります。引き続き歯根も作られます。
そして、6歳ごろ「6歳臼歯」は、ついにハグキから出てきます。頭を口の中にどんどん出しながら、歯根も徐々に作られて10歳ごろに歯根の先端まで完成します。
というわけで、永久歯は、6歳臼歯が作り始められる胎生3.5ヶ月頃から最後に生える12歳臼歯の完成時期の15歳頃まで長期間にわたり形成されます。
この長期間の形成時期に何らかの障害を受けると、その形成時期に応じた歯の異常が起こることも考えられます。言い換えれば、妊娠中のお母さんの栄養状態や体調管理がよく、生まれた子供の食生活や体調管理もよければ永久歯も問題なく作られるということです。
イメージしてみましょう!
子供さんの顎の骨の中では今まさに永久歯が作られているのです。
乳歯のむし歯治療
当歯科医院では、乳歯のむし歯治療は、無麻酔下で行うことがほとんどです。
まず、歯の構造からお話しましょう。
口の中に出ている最も硬い部分を「エナメル質」といいます。その内側に「象牙質」というエナメル質より軟らかい部分があり、歯根も全てこの象牙質で出来ています。そして歯根の先端から神経がはいりこんでいます。
次にむし歯の進み方。
歯の表層(エナメル質)で出来たむし歯はその構造に沿って(歯の中心に向かって)進みます。硬い組織ですので横方向にはあまり広がりません。むし歯がエナメル質と象牙質の境目に来ると、そこで一気に横方向へ広がります。そして広がりながら深く進行して神経の入っている部屋に近づいていきます。だから、歯を横から見てむし歯の断面を見ると、入り口が狭く中で大きくふくらんだ「壺」のような形をしています。永久歯よりも乳歯のほうが水分含有率も高く柔らかいので、この特徴が強く出ます。
今度は治療について。
このような特徴を持ったむし歯を退治するには、まず入り口を大きく開けねばなりません。エナメル質は硬いので器械を使わないと削ることが出来ませんが、エナメル質には知覚がありませんので削っても痛みはありません。入り口が開いたら今度はむし歯になった象牙質を掘り出します。象牙質には知覚がありますので器械を使うと痛みが強く出るので使いません(痛みが強いほど神経へのダメージが大きいため)。 ごく小さなスコップで丁寧に掘り出します。その際、痛みがまったく無いわけではありませんが、ほとんどのお子様が我慢できる程度です。(永久歯より乳歯の方が知覚も鈍いのです)
そしてむし歯を取りきった後すぐに、詰める処置を行います。金属は使いません、全て歯と同色のコンポジットレジンを用います(歯の切削量が少なくて澄みます)。
乳歯は永久歯と違い、象牙質が薄く神経がダメージを受けやすいのです。麻酔をして処置をすると、痛みは無くなりますが、神経がどの程度刺激を受けているかがつかめなくなります。麻酔をしなければ、痛みの反応を見ながら削る力を加減できます。むし歯を削るという治療行為も神経にダメージを与えると考えます。このダメージが治療の予後を左右することもあるでしょう。
このダメージを必要最小限にとどめるために当院では、乳歯のむし歯治療には、原則として麻酔を行わないのです。
乳歯のムシ歯と永久歯の歯並び
「乳歯のムシ歯が、永久歯の歯並びに影響すると聞いたのですが本当ですか?」 子供さんを治療に連れて来たお母さんの疑問です。答えはYesです。 ムシ歯がひどく進行してしまい、歯の原形をとどめていないような場合、隣の歯や噛み合う歯が寄ってきてしまい、後から出てくる永久歯のスペースが不足することが考えられます。スペースが不足すると、永久歯は横にそれて出てきたり低い位置で止まってしまったりします。
また、ムシ歯が乳歯の神経まで到達してしまい炎症を起こしたり、壊死してしまった場合。乳歯の歯根の吸収が速やかに行われないことがあります(全てがそうなるとは限りませんが)。すると、下から上がってきた永久歯は乳歯の歯根を避けるようにそれて出てくることになります。
そのほかにも、ムシ歯で痛むところを避けて噛む事を続けてしまうことで、悪い噛み癖がついてしまい歯並びがその噛み癖に合わせて出来上がることも考えられます。
歯並びは本来、本人が持っている設計図(その方に最も適したすばらしい設計図)つまり遺伝情報で決まります。
しかし、進行したムシ歯はその設計図を書き換えてしまう可能性を持っているのです。そうさせないためにも、早めの治療と予防を心がけましょう。
歯の外傷、抜けてしまったら?
外傷によって歯が抜けてしまった場合について。
外傷の程度が大きくなると、完全に歯が抜けてしまったり、抜け落ちなくてもプランプランになったり、歯がハグキにめりこんでしまったり、歯の向きや位置が変わってしまう、などいわゆる歯の脱臼が起こってしまいます。歯と骨は「歯根膜」という薄い膜でつながっています。脱臼すると、この膜が断裂してしまうのです。この歯根膜が元通りにつながれば、歯はもとの位置にとどまります。この歯根膜が壊死してしまうと、歯の脱落や歯根吸収が起こってしまいます。
つまり、歯が元の位置に戻って機能できるかどうかは、歯根膜を元通りに出来るかどうかにかかっていることが言えます。
そのためにはまず、歯の位置や向きが変わっていても、歯がハグキにとどまっている場合、そのままの状態で速やかに歯科受診しましょう。歯の位置を整復して固定します。
次に歯が完全に抜けてしまった場合。
口の外に落ちた時は、急いで歯を探し出し、表面に付いたゴミを軽く水道水で流します。長時間水道水にさらさないように、また、歯根の表面をゴシゴシこすったりしないようにしましょう(どちらも歯根膜を傷めてしまうからです)。抜けた歯は、口の中(飲み込まないように頬と歯列の外側の間)に入れるか、または牛乳につけて持って行きましょう。
もちろん、出来るだけ速やかに歯科医院を受診することをおすすめします。歯を元に戻す処置が早ければ早いほど、歯根膜が元通りにつながる確率は上がりますので。上手く歯がつながっても、神経は壊死してしまうことがほとんどなので、時期を見て神経の処置をしなければいけません。
その後も、歯根の様子が変わりないかどうか、定期的な経過観察は必要ですね。
「歯根膜」、歯と骨をつなぐ非常に重要な組織です。
いざと言う時にこのことを知っているのと知らないのとでは大きく違います!